ガウディの建築——140年以上、まだ完成していない教会

直線のない建築に、迷い込む

サグラダ・ファミリアの前に立つと、直線がほとんど見当たらないことに気づきます。柱は木の幹のように枝分かれし、天井は森の梢のように光を透かす。人工の建物のはずなのに、まるで自然の中に迷い込んだような感覚を覚える人が多いといいます。

140年以上、まだ完成していない教会

サグラダ・ファミリアの建設が始まったのは1882年。翌年、若き建築家アントニ・ガウディが設計を引き継ぎ、1926年に亡くなるまでの生涯を、この教会に捧げました。

驚くべきことに、**着工から140年以上が経った今も、この建物は完成していません。**ガウディ自身、「私の依頼主(神)は、完成を急がない」という言葉を残したと伝えられています。長い年月をかけて少しずつ形を変えながら建ち続けている、世界でも珍しい「未完の世界遺産」です。

ガウディはサグラダ・ファミリアのほか、グエル公園、カサ・バトリョなど、自然の形態を建築に取り入れた独自の様式でバルセロナの街を彩りました。これらの作品群は、ユネスコ世界文化遺産に登録されています。

なぜ自然の中にいるように感じるのか

ガウディの建築には、他の建築様式と一線を画す特徴があります。

これらは装飾のためではなく、自然の構造原理を建築に応用した結果生まれた形だとされています。人は直線的で角ばった形よりも、なだらかな曲線を好みやすいといわれます。ガウディの建築はこの曲線を徹底的に用いることで、硬さや威圧感のない、包み込まれるような感覚を生み出しているのです。

柱が木のように枝分かれし、天井が葉の重なりのように光を透かす構成は、実際の自然の中にいなくても、自然を感じさせる効果を持つと考えられています。空間ごとに異なる色彩の光が差し込む構成は、歩みを進めるたびに、訪れる人の感情の状態を少しずつ変化させていきます。

ガウディの先にある、もう一つのスペイン

ガウディの建築を見て回った旅行者の多くは、そのままバルセロナの街を歩き続けます。ランブラス通りの賑わい、バル(立ち飲みの酒場)でつまむタパス、地中海に面したビーチで過ごす午後——スペインは、芸術と生活が地続きになっている国です。

さらに足を延ばせば、フラメンコの本場アンダルシア、闘牛とワインの国、情熱的でありながらどこかのんびりとした時間の流れ。ガウディの未完の教会と同じように、この国もまた、完成された観光地というより、今も変わり続けている生きた場所なのかもしれません。

まとめ

サグラダ・ファミリアは、140年以上をかけてなお未完成の、世界でも珍しい建築です。直線を捨て、自然の形を選んだガウディの発想は、訪れる人に人工物でありながら自然の中にいるような安心感を与え続けています。完成を急がず、ゆっくりと形を変え続けるこの建物は、スペインという国そのものの豊かさを象徴しているのかもしれません。