鎌倉の有名な踏切で写真を撮るときに注意すべきマナーとは

カンカンカン、と警報機が鳴り、遮断機がゆっくり下りてくる。坂の下には、踏切と線路、その向こうに光る湘南の海。そこへ小さな電車が、海沿いをかすめるように滑り込んでくる——。

江ノ電・鎌倉高校前駅の横にある「鎌倉高校前1号踏切」は、アニメ『スラムダンク』のオープニングで、桜木花道が江ノ電の通過を待つ場面のモデルになった場所です(鎌倉市の発表でも、アニメのオープニングに登場する踏切として紹介されています)。国内外から人が集まり、いまや鎌倉でもっとも「撮られている」踏切のひとつになりました。

ただ、この数年で、ここでの写真の撮り方は大きく変わっています。YouTubeやSNSで見た「坂の真ん中から撮った一枚」をそのまま再現しに行くと、現地では少し戸惑うことになるはずです。

あの坂の真ん中に、もう人は立たない

きっかけは、まさにその「一枚」でした。アニメと同じ構図を求めて、踏切前の坂道——つまり車道——の上で立ち止まって撮る人が増え、近隣の住民から苦情が寄せられるようになります。

鎌倉市は2019年4月、「鎌倉市公共の場所におけるマナーの向上に関する条例」を施行しました。混雑した場所での食べ歩きなどと並んで、車道や線路の周辺で立ち止まるなどして撮影することが、9項目の「迷惑行為」のひとつに挙げられています。

よく「条例違反で罰せられる」と紹介されますが、正確にはこの条例は行為を禁止・規制するものではなく、罰則もありません。マナーを呼びかけることで意識を変えようという条例です。施行直後の地元紙には「実効性に課題」という見出しも並びました。

だからこそ、その後は現場での対策が積み重なっていきます。

撮影場所は、踏切の隣の公園に用意された

大きな転機は2025年9月です。鎌倉市は9月13日から16日までの4日間、踏切に隣接する腰越ラッコ公園の中に撮影エリアを設け、市職員などが観光客をそこへ誘導する実証実験を行いました。4日間で撮影スポットへ誘導した人は9,490人。ロータリー付近に停めようとした車67台にも声がかけられています。

結果として歩道が確保され、危険な撮影も減ったことから、市は2025年10月から、それまで2名だった警備員を**5名(特に混む時期は7名)**に増やしました。費用の一部は、ふるさと納税のガバメントクラウドファンディング(目標350万円)でも募られました。

実際に訪れた人のレポートには、以前より落ち着きを取り戻し、「最高のフォトスポットに戻っていた」と紹介しているものもあります。

写真: MiNe / CC BY 2.0

構図が違う? それなら、レンズで距離を詰める

公園の撮影エリアは、坂の真ん中とはもちろん立ち位置が違います。ここで「アニメと同じ角度じゃない」とがっかりするか、ここからしか撮れない一枚を探すかで、旅の後味はずいぶん変わります。

ヒントになるのが、望遠で撮ったときの圧縮効果です。遠くのものを大きく写すと、手前の踏切と、奥の電車、さらに向こうの海との距離がぎゅっと縮まって見え、線路のカーブや奥行きが強調されます。車道に一歩も出なくても、画面の中では電車と海がぐっと近づくわけです。

スマートフォンのズームだけでは画質が荒れてしまう、という人には、カメラ部分に挟むだけのスマホ用クリップ式望遠レンズがあります。光学的に8倍まで寄れるタイプなら、デジタルズームのように画質を落とさず、撮影エリアの中から電車の顔や踏切の警報機を大きく切り取れます。レンズを外せば単眼鏡としても使えます。

出かける前に確認しておきたいのが、市などが公開している「kamakura-live.jp」です。撮影スポットの様子を、9時から19時まで3分ごとの最新画像で見ることができます。午後や週末は人が集中しやすいので、画面が空いている時間帯を狙うと、落ち着いてシャッターを切れます。

帰りの江ノ電で、もう一度「並ぶ」ことになる

写真を撮り終えて鎌倉方面へ戻ろうとすると、今度は電車の混雑が待っています。

江ノ電のいちばん混む区間は鎌倉〜和田塚の間で、ピークは13時55分〜14時54分という真っ昼間。2024年度の混雑率は146%(国土交通省の混雑率調査)で、前年度の99%から約1.5倍に跳ね上がり、コロナ禍前の水準も大きく超えました。江ノ島電鉄の担当者は、その理由を「外国人観光客の増加が一番」と話しています。ゴールデンウィークには、沿線住民が鎌倉駅の外に並ばずに駅に入れるようにする社会実験が行われたほどです。

混雑をかわすなら、旅行記でよく挙がる方法がいくつかあります。

朝のうちに鎌倉高校前で写真を撮り、昼過ぎの鎌倉行きの電車は見送って、午後は海沿いを歩いて帰る。混み合う駅のホームで電車を待つはずだった時間が、由比ヶ浜の波打ち際を歩く時間に変わります。

ヘッダー写真: Quercus acuta / CC0