人気の登山道でも油断禁物、ケープタウンのテーブルマウンテンに登る前に
ケープタウンの街のどこからでも見える、てっぺんが平らな山。テーブルマウンテンの頂上へは、ロープウェイで数分で上がれます。けれど、山の斜面には一本の細い道が、ジグザグに頂上へ向かって伸びているのが見えます。ロープウェイ代を節約して、自分の足で登る。2時間ほどの山歩きで、あの景色が無料で手に入る。
朝の登山口には、同じことを考えた人たちが集まっています。ランニングウェアの地元の人、バックパックの旅行者、家族連れ。これだけ人がいれば、一人で登っても心配はなさそうです。
登山口の看板に描かれている絵
登山道の入口には、国立公園の案内板が立っています。
写真: Mike Taljaard / CC BY-SA 3.0
帽子、上着、水、登山靴。その並びの中に、一人で歩く人の絵に斜線が引かれ、その隣に三人で並んで歩く人の絵が描かれています。単独で登らず、グループで登ること。暑さや天気の急変への注意と同じ扱いで、この山の登山口に掲げられている決まりです。
なぜ、人の多い山で、わざわざ一人で歩くなと書くのか。
人気の登山道で、起きていること
理由は、地元の報道を見るとわかります。2026年1月には、テーブルマウンテン国立公園の登山道「The Glen」で、ハイキング中の夫婦が武器を持った男たちに襲われ、けがを負って持ち物を奪われました(IOL / Cape Argus)。2025年9月には、パイプ・トラックと呼ばれる登山道で女性を襲って物を奪った容疑者が逮捕されています(TimesLIVE)。夕日の名所として知られるライオンズヘッドやシグナルヒルでも、強盗の被害が続いたことが報じられてきました。
山の上は、街の中のように人の目が途切れずに続く場所ではありません。登山口ではにぎやかでも、歩くペースが違えば、人と人の間はすぐに開きます。曲がり角の先、岩陰の休憩場所で、一人きりになる時間ができます。人気のコースだから安全、とは言えないのです。
公園が勧める「4人以上」
テーブルマウンテン国立公園を管理する南アフリカ国立公園局(SANParks)は、ハイキングをするならグループで、4人以上が最も安全だと呼びかけています。決められた登山道を外れないこと、貴重品は持っていかないことも、あわせて勧めています(Cape Town Etc)。日本の外務省も、海外での登山やトレッキングでは、単独で行動せず、ガイドを雇うか団体で行動するよう呼びかけています(外務省 海外安全ホームページ「海外における登山・トレッキング」)。
一人旅なら、選択肢は次のどれかです。
- 宿や現地のツアー会社が催行する、ガイド付きのハイキングに参加する
- 宿で知り合った旅行者と、4人以上のグループを組んで登る
- 登りはやめてロープウェイで上がり、頂上の遊歩道を歩く
スマートフォンや財布、カメラは最小限にし、緊急時のために国際緊急番号の112を控えておきます。
頂上の景色は、どの道で着いても同じ
ロープウェイ代を浮かせることは、旅の節約としては正しい判断です。ただ、この山では、その節約に一人きりの時間がついてきます。ガイドツアーの参加費やロープウェイ代は、頂上から大西洋とケープタウンの街を見下ろすための、安全の代金です。登山口の看板の、三人並んで歩く絵のとおりに登れば、同じ景色にたどり着けます。
ヘッダー写真: Mike Peel / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)