カイロの市場で買ったパピルス、実はパピルスじゃないかも

三千年以上前の書物を記した、ナイル川の草の紙。エジプトのお土産と聞いて、パピルスを思い浮かべる人は多いはずです。ハン・ハリーリ市場の路地を歩けば、ツタンカーメンの黄金のマスクや、天秤で心臓の重さを量る「死者の書」の場面を描いたパピルスが、何十枚も店先に吊るされています。

しかも、思ったより安い。何枚かまとめて買えば、さらに値引きしてくれる。友人へのお土産にもちょうどいい。エジプトで、エジプトの名物を買うのだから、迷う理由はなさそうです。

何十枚も並ぶ、同じ絵柄

店先を何軒か見て回ると、同じ絵柄、同じ大きさのパピルスが、どの店にも同じように並んでいることに気づきます。値段も、交渉次第でどこまでも下がっていく。

本物のパピルスは、手間のかかる工程を経て作られます。草の茎の芯を薄く裂いた帯を水に浸し、縦に並べた上に横向きの帯を重ね、押しつぶして一枚にする。その一枚に、手で絵を描く。

写真: FrogUnderALilyPad / CC BY-SA 4.0

写真は、パピルスの帯を直角に重ねていく作業です。これだけの手間がかかるものが、店先で驚くほどの安値で、何十枚も吊るされている。そこに引っかかりを覚えてもいいはずです。

安い一枚の正体

エジプトの旅行会社や旅行者の案内では、観光地で売られる安い「パピルス」には、バナナの葉などを加工して作ったものが多いと繰り返し注意されています(Pyramids Landほか)。色合いは本物とよく似ていて、絵が描かれてしまえば、ぱっと見では区別がつきません。

逆に、本物だと言われて高い値段を付けられたものが、実はバナナの葉だった、という旅行者の報告もあります。値段は、本物かどうかの証明になりません。

光に透かすと、格子が見える

見分ける手がかりは、作り方の違いそのものにあります。本物は縦と横の帯を重ねて作るので、

どれか一つで断定はできませんが、店の人に「光に透かして見てもいいですか」と頼めば、たいていは見せてくれます。見せたがらない店なら、その時点で候補から外してかまいません。値切り交渉を始める前に、まず透かす。それがいちばん確実な見分け方です。

本物を手に入れたら、折らずに持ち帰ります。パピルスは折り曲げると繊維が割れ、折り目から傷みます。大きめの絵を買う予定があるなら、長さを調節できる筒型のポスターケースを持っていけば、丸めたまま機内持ち込みの手荷物にできます。

店先の一枚を、窓の光にかざす

ハン・ハリーリ市場の店は、どこも薄暗い路地に面しています。気になる一枚が見つかったら、店の外に出て、空の明るい方へかざしてみる。縦と横に重なる草の繊維が透けて見えたら、それは三千年前の書記が使っていたものと同じ組み方をした、本物の紙です。

ヘッダー写真: Diego Delso / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)