リオのビーチでアサイーを買ったら100倍の請求も、カード払いに潜む落とし穴
財布をすられたら、失うのはその財布に入っていた金額までです。ところがカードで払った場合、失う金額に上限はありません。上限を決めるのは、あなたではなく、決済端末に数字を打ち込む相手だからです。
リオデジャネイロへ行く人の多くは、治安の話を聞いて「現金はなるべく持たず、カードで払おう」と考えます。スリや強盗への備えとしては、筋の通った判断です。けれどこの街のビーチには、その判断がちょうど裏目に出る場面があります。
70レアルのアサイーが、7,000レアルになりかけた日
コパカバーナとイパネマの間に突き出した岩場の海岸、アルポアドールでの出来事です。
写真: Mayra Pavanello Munerato / CC BY-SA 3.0
CNNブラジルの報道によれば、アルゼンチンからの旅行者が、ビーチの物売りからアサイーを2つ買いました。値段は2つで70レアル。支払いはブラジルで広く使われている即時送金「Pix」で、と話がまとまると、物売りは「入力してあげる」と旅行者のスマートフォンを受け取ります。そして銀行アプリに打ち込んだ金額は、7,000レアルでした。
この送金は承認されませんでした。すると物売りはすぐに金額を700レアルに打ち直し、こちらは通ってしまいます。旅行者は後で気づいて市の警備隊(グアルダ・ムニシパル)に通報し、物売りはその場で捕まりました。
見てほしいのは、この手口に「盗む」動作が一つもないことです。旅行者は自分で物を買い、自分のスマートフォンを、支払いのために自分から手渡しています。
総領事館が名指しする「ビーチでのカード払い」
これは珍しい一件ではありません。在リオデジャネイロ日本国総領事館は、コパカバーナやイパネマなどのビーチ周辺で、飲食物を買う際にクレジットカードを使った観光客が、本来の金額を大幅に上回る額を請求される事案が数多く報告されているとして注意を呼びかけています。手口として挙げられているのは、決済端末の金額を確認させない、端末そのものに細工がされている、といったものです。
総領事館はまた、タクシーなどの支払いで、暗証番号の入力を求められないカード決済の際に、正規の料金の末尾にゼロを付け足して決済する手口にも触れています(OTOA 渡航先速報:在リオデジャネイロ日本国総領事館発出情報)。10レアルが100レアルに、100レアルが1,000レアルに。桁が一つ増えるだけで、被害は10倍になります。
端末は、相手の手の中にある
なぜビーチでは、とくにこれが起きやすいのでしょうか。場面を思い浮かべると、理由はいくつも重なっています。
- 決済端末を持っているのは物売りで、画面はたいてい相手の側を向いている
- 真昼の日差しで、小さな液晶の数字が読みにくい
- 砂のついた手、濡れた体、パラソルの下の低い椅子。立ち上がって画面をのぞき込むのが面倒になる
- タッチ決済なら、暗証番号も求められない。カードを近づけた一瞬で終わる
- 物売りは次々にやってくる。飲み物、軽食、水着、帽子。一日に何度も支払いが発生する
そして、被害に気づくのは多くの場合、その日の夜か、帰国してからの利用明細です。ビーチにいる間は、何も起きていないように見えます。
ビーチには「なくしてもいい額」だけを持っていく
ここで最初の話に戻ります。財布を盗まれても、失うのは中身まで。ビーチでは、この「上限のある損」のほうが、上限のない損よりずっと扱いやすいのです。
リオのビーチで物売りから買うときは、次のように決めておくと、この手口はほとんど成り立たなくなります。
- ビーチには、その日の飲み物や軽食に使う分だけの少額の現金を持っていく。小さい額の紙幣をそろえておく
- それでもカードで払うなら、端末を自分の手で受け取り、画面の金額を声に出して読んでからカードを近づける
- 自分のスマートフォンを、支払いのために相手に渡さない。Pixなどの送金は、自分で金額を入力する
- カード会社のアプリで、利用のたびに通知が届く設定にしておく。ビーチを離れたら一度確認する
もし高額の請求に気づいたら、すぐにカード会社へ連絡して利用停止と不正利用の申し立てをし、警察に届け出ます。リオには観光客の被害を専門に扱う警察の窓口もあり、困ったときは総領事館に相談できます。
小さな現金が、いちばん安全な財布になる場所
リオデジャネイロのビーチの物売りは、この街の風景の一部です。冷えたマテ茶も、砂浜で食べるアサイーも、彼らがいなければ味わえません。ほとんどの物売りは、決められた値段で、きちんと商売をしています。
ただ、カードや送金アプリは、相手が一人でも悪意を持っていれば、上限なく引き出せる道具にもなります。街なかではカード、ビーチでは少額の現金。支払い方を場所で分けるだけで、アサイーは70レアルのまま、おいしく食べられます。
ヘッダー写真: DiegoL569 / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)