フルカバー保険でも自己負担に?アイスランドのレンタカーで要注意の2つの壊れ方

CDW、SCDW、GP、SAAP、TP。アイスランドのレンタカーを予約しようとすると、画面にはアルファベット3〜4文字の保険が次々に並びます。車両損害、その上乗せ、砂利、砂と火山灰、盗難。全部にチェックを入れた「プレミアム」や「プラチナ」と呼ばれるプランは、1日あたりの料金が車の代金に迫ることもあります。

それでも、初めての国で、しかも火山と氷河の国です。いちばん上のプランにしておけば、何が起きても大丈夫——そう考えて、多くの人が最上位にチェックを入れます。

ところが、この国のレンタカーでとくに起きやすく、しかも高くつく2つの損害は、その「全部入り」の外側に置かれていることがほとんどです。

略語の意味を、一つずつほどいてみる

まず、並んでいる保険が何を守っているのかを確認しておきます。名称や範囲は会社ごとに違いますが、おおむね次のような構成です。

つまり「全部入り」とは、ぶつけた、石が当たった、砂で削られた、盗まれたの4つに備えた状態です。裏を返せば、この4つに当てはまらない壊れ方は、どれだけ上のプランでも対象になるとは限りません。

川は、どの保険も渡ってくれない

一つ目は、川です。

内陸のハイランドへ延びる「F」の付く道路(F道路)は、夏の一時期しか開かない未舗装路で、橋のない川を車で渡る区間があります。4WD車でなければ走れない道で、レンタカー会社も4WD車での通行しか認めていません。

アイスランドの捜索救助隊(ICE-SAR)が運営する公式の安全情報サイトSafetravelは、ハイランドの運転について、川を渡ることによって生じた損害を補償する保険はないとはっきり書いています。エンジンに水が入る、車体の下を岩に打ちつける、流されて動けなくなる。どの壊れ方も、車体の損害であることには変わりありませんが、原因が「渡河」であれば対象外、というのが多くの会社の規約です。

写真のような浅い流れでも、氷河から流れ出す川は、雨や日中の気温によって水位も流れの速さも変わります。Safetravelが勧めているのは、渡る前に歩いて深さと流れを確かめること、低いギアでゆっくり、途中で変速せずに進むこと。そして迷ったら渡らないこと、あるいはほかの車が来るのを待つことです。

保険が守ってくれない以上、判断の材料は「保険に入っているか」ではなく「この川を渡るかどうか」だけになります。

風は、ドアを反対側へ折り曲げる

二つ目は、もっと地味で、F道路に行かない人にも起きる損害です。開けたドアが風にあおられ、ヒンジの反対側へ折れ曲がる。

アイスランドは、平地でも車の外に立っていられないほどの風が吹く日がある土地です。駐車場で何気なくドアを開けた瞬間に突風が入り、ドアが限界まで一気に開いて、ヒンジやドアの付け根、隣のフェンダーまで歪んでしまう。レンタカー会社の多くは、この「風によるドアの損傷」を、CDWやSCDWの対象外として規約に明記しています。事故でも、砂利でも、砂でもないからです。

ごく一部の会社は、最上位のプランで渡河や風によるドアの損傷まで補償するとうたっていますが、それは「例外」として宣伝されるほど少数です。予約の前に確認すべきなのは、プランの名前ではなく、約款の「対象外(exclusions)」の欄です。

予約画面を閉じる前に、確かめておくこと

予約を確定する前に、次の点を約款で確かめておくと、「フルカバーのつもりだった」という事態を避けられます。

そして現地では、保険の外側にある2つの損害を、運転と行動で避けることになります。ドアの扱い方は、旅行者やレンタカー会社の間でよく勧められている方法です。

「全部入り」が守っているのは、壊れ方の半分

アイスランドの保険は、決して意味のないものではありません。砂利道を長く走れば、フロントガラスに石が当たることはいくらでもありますし、砂嵐の中を走れば塗装が削られることもあります。そうした損害に、GPやSAAPはきちんと備えています。

ただ、この国の自然が車を壊すやり方は、その4つだけではありません。水と風。アイスランドを象徴する二つの力が、ちょうど保険の網目の外にあります。いちばん上のプランにチェックを入れた後も、ドアを開ける手と、川の手前で止まる判断は、自分で用意しておく必要があります。

ヘッダー写真: Wojciech Strzelecki "Wojtrix" / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)