ドブロブニク観光の落とし穴、ビーチ帰りの格好で旧市街に入ると…
ドブロブニクの旧市街には、改札もチケット売り場もありません。ピレ門をくぐれば、磨かれた石畳のメインストリート、ストラドゥンがそのまま目の前に延びています。お金がかかるのは城壁の上を歩くときだけで、街の中は誰でも、いつでも歩ける。
そう聞くと、旧市街は「海辺のリゾートの延長」のように思えてきます。実際、海は驚くほど近い。けれどこの街には、門をくぐった瞬間から効き始める、もう一つの決まりがあります。
海水浴場から、門まで歩いて数分
旧市街の東の出入口、プロチェ門を出て少し歩くと、市内でいちばん知られた海水浴場、バニェ・ビーチがあります。上の写真の右下、パラソルが並んでいる砂浜がそこです。城壁と旧港が、泳いでいる人の視界にそのまま入る距離です。
もう一か所、旅行者に人気なのが城壁の外側の岩場です。旧市街の路地を海側へ進み、城壁に開いた小さな出入口(地元の言葉で「穴」を意味するブジャ)を抜けると、崖に張りつくようにバーがあり、その下の岩から人がアドリア海に飛び込んでいます。
写真: Alex Proimos / CC BY 2.0
ここで気づいてほしいのは、道順です。岩場へ行くにも、岩場から戻るにも、旧市街の中を歩くしかない。泳いで、日に焼けて、少しビールを飲んで、濡れた水着のまま城壁の穴をくぐって戻る——その一歩目が、もう「旧市街の通り」です。
城壁の内側では、水着は「服」として扱われない
ドブロブニク市は、市の「公共秩序に関する条例(Odluka o komunalnom redu)」で、旧市街の公共の場所を水着姿、裸、または上半身裸などで歩くことを禁じています。2020年に地元紙が報じたところでは、違反には1,000クナの罰金が科され、市の条例担当の職員(コムナルニ・レダル)が見回ってその場で取り締まります。ピレ門、プロチェ門、そしてブジャの3か所の出入口には、そのことを知らせる看板も立てられたと報じられています。
条例の施行後には、実際に水着姿で旧市街を歩いていた2人が、それぞれ1,000クナを科されたと地元メディアが伝えています。看板を置いただけの「お願い」ではなく、実際に払わされる決まりだということです。
クロアチアは2023年にユーロへ切り替わりました。1,000クナを固定の換算率(1ユーロ=7.5345クナ)で直すと約133ユーロ。旅行情報サイトの中には150ユーロと書くものもあり、現在の正確な額は資料によってそろっていません。いずれにしても、日本円で2万円を超える金額を、ビーチ帰りの数分間で払うことになりうる、という点は変わりません。
世界遺産の街が、なぜ服装にうるさいのか
旧市街は博物館ではなく、今も人が暮らす街です。一方で、ひとつの湾に大型クルーズ船が何隻も入り、城壁の中の細い路地が観光客であふれる光景が、長く問題になってきました。市はこうした状況を受けて「Respect the City(街に敬意を)」という取り組みを掲げ、クルーズ船の寄港の調整などとあわせて、街の中でのふるまいにも目を向けてきました。
つまりこの規制は「肌を見せるのははしたない」という道徳の話である以前に、ここはビーチではなく住宅街だという線引きです。城壁の外の岩場や砂浜では水着で問題なく、門をくぐった内側では駄目。線は、城壁そのものに引かれています。
濡れた水着の上から、何を着て門をくぐるか
とはいえ、泳いだ後に服を着るのは、言うほど簡単ではありません。岩場にも砂浜にも、体を拭いて着替えるための場所がいつも空いているとは限らず、濡れた水着のままTシャツを着ると、背中が張りついて気持ちが悪い。ここで「数分だから」と水着のまま歩き出す人が出てきます。
頭からかぶって中で着替えられる**お着替えポンチョ(ラップタオル)**を一枚持っておくと、この問題はほぼ消えます。タオルとして体を拭き、そのままかぶった内側で水着を脱いで服を着る。岩場の上でも、周りの目を気にせずに済みます。マイクロファイバーの薄手のものなら、小さくたためて昼の街歩きのバッグにも入ります。
準備としては、次の3つを覚えておけば十分です。
- 旧市街の門(ピレ門、プロチェ門、城壁の穴の出入口)は、服を着てからくぐる
- 上半身裸も対象。男性もシャツを着る
- 海へ行く日は、着替えのための一枚をバッグに入れておく
城壁は、泳ぐ人と歩く人を分ける線
ドブロブニクの旧市街は、入るのに一銭もかかりません。けれどそれは、ルールがないという意味ではありませんでした。お金を取られるのは入口ではなく、水着のまま中を歩いたとき。無料の街で唯一、思いがけず高くつく場面が、この「ビーチ帰りの数分」です。
泳いだら、服を着てから門をくぐる。その順番さえ守れば、アドリア海の岩場と世界遺産の石畳を、同じ一日のうちに両方楽しめます。