同じエスプレッソなのに値段が違う?ローマのバールで損しない飲み方

ローマの朝のバールは、立っている人のほうが多い場所です。カウンターの前に数人が並び、エスプレッソを受け取ると、砂糖を一さじ入れて二口、三口。カップを置いて「グラツィエ」と出ていくまで、ほんの数分しかかかりません。店の奥や表の広場に面したテーブルは、それとは別の時間が流れる場所です。

歩き疲れた旅行者は、たいていそのテーブルのほうに向かいます。エスプレッソはどこで飲んでも同じ一杯、値段も同じだろうと考えて。

同じ一杯に、値段が二つある

イタリアのバールでは、同じエスプレッソに**「アル・バンコ(al banco=カウンターで立って)」と「アル・タヴォロ(al tavolo=テーブルで座って)」の二つの値段**がついていることが珍しくありません。カウンターの上や壁に掲げられた価格表に、列が二つ並んでいるのはそのためです。

これは店の気まぐれではなく、法律が前提にしている仕組みです。イタリアの公安法の施行規則(1940年勅令第635号)第180条は、飲食店などの営業者に、価格表を店内の客から見える場所に掲示することを義務づけています。イタリアの消費者向けの法律解説では、この規定のもとで各品目の価格を示し、テーブルサービスの割増分ははっきり区別して表示しなければならないとされています(Consumatori.it「Prezzi esposti: cosa prevede la legge?」)。

つまり、座ると高くなること自体は合法です。表示されていれば、それは「ぼったくり」ではなく、最初から決まっている値段です。

ローマのバールのエスプレッソマシンとカウンター 写真: Wilfredor / CC0

広場に面した席は、何倍にもなる

差がどのくらいになるかは、店と場所しだいです。そして観光地の広場では、その差が大きく開きます。

イタリアの食のメディアAgrodolceが各地の広場のコーヒー価格を調べた記事では、ローマのナヴォーナ広場に面した店で座って飲むエスプレッソが5ユーロ、スペイン広場近くのコンドッティ通りにある老舗カフェ・グレコではカウンターが1.70ユーロ、テーブルが6ユーロとされていました(Agrodolce「Quanto costa il caffè nelle piazze italiane?」)。調査時点の価格なので、今の値段とは異なります。それでも、カウンターとテーブルで3倍以上の差をつける店がある、ということは覚えておいてよいでしょう。

旅行者が驚くのは、会計のときです。1ユーロ台のつもりで頼んだ一杯が、レシートでは数ユーロになっている。価格表を見ていなければ、それが割増なのか、不当な請求なのか判断できません。

座る前に、壁の価格表を見る

店を責める前に、確かめるべき場所は一つです。

表示があって、その通りの金額を請求されたなら、それは正当な値段です。逆に、表示のない割増を求められたら、価格表を指さして確かめてかまいません。

景色に払うか、立ったまま飲むか

座って飲むことが損だというわけではありません。ナヴォーナ広場の噴水を眺めながら、午後の光の中で一杯のエスプレッソに30分かける。その数ユーロは、椅子と景色と時間の代金です。

大事なのは、それを選んで払うことです。朝の一杯はカウンターで地元の人に混じって立ったまま、夕方の一杯は広場のテーブルでゆっくりと。ローマのバールでは、座る前に一度だけ壁を見上げれば、同じエスプレッソを二通りに楽しめます。

ナヴォーナ広場に並ぶレストランのテーブル席 写真: Krzysztof Golik / CC BY-SA 4.0

ヘッダー写真: Alvesgaspar / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)