サロンを巻けば大丈夫、ではなかった。バリ島の寺院で観光客が入れない場所
入口でサロンを受け取り、腰に巻いて帯を締める。これで寺院に入る準備は整った——バリ島を訪れる旅行者の多くは、そう考えています。ガイドブックにも旅行記にも、「寺院ではサロン着用が必須」と書いてあるからです。
では、サロンを巻いた旅行者は、寺院のどこまで入れるのでしょうか。バリ州知事が出している観光客向けの通達を読むと、答えは多くの人の想像よりずっと手前にあります。
寺院は、塀で三つに分かれている
バリの寺院(プラ)は、塀と門によって三つの区画に分けられています。バリ州の空間計画の指針でも説明されている「トリ・マンダラ」という考え方です(バリ州 Tri Mandala(Sistem Informasi Wilayah dan Tata Ruang Bali))。
- ニスタ・マンダラ:いちばん外側の区画
- マディア・マンダラ:中間の区画
- ウタマ・マンダラ:いちばん奥の、最も神聖な区画
外から奥へ進むほど神聖さが増し、区画の境目には割れ門(チャンディ・ブンタル)や屋根付きの門が立っています。写真で見るあの門は、単なる飾りではなく、「ここから先は性格の違う場所」という境界線です。
通達が禁じているのは、奥の二つ
2023年5月、バリ州のコステル知事は外国人観光客向けの通達(2023年第4号)を出しました。バリ州政府の観光サイトは、この通達で観光客に禁じられた行為の一つとして、礼拝の目的以外で寺院の主要な区画に入ることを挙げています(Love Bali(バリ州政府))。
報道によれば、通達の文言が名指ししている区画は、**ウタマ・マンダラ(ウタマニン・マンダラ)とマディア・マンダラ(マディアニン・マンダラ)**の二つです(Asia News Network)。つまり禁じられているのは「本殿」だけではありません。中間の区画も含めた、外側の一つを除くすべてです。
この内容は2025年3月24日に出された改訂版の通達(2025年第7号)にも引き継がれ、違反した外国人観光客には、インドネシアの法令に基づく制裁や法的手続きがとられると明記されました(Bali Media Center(バリ州政府))。
サロンは入場券ではない
ここで、サロンの意味を置き直す必要があります。
通達は別の項目で、神聖な場所ではふさわしい服装をすることを観光客の義務としています。サロンは、寺院の敷地に足を踏み入れるための最低限の身だしなみです。それを巻いたからといって、奥の門をくぐる資格が生まれるわけではありません。
奥の二つの区画に入れる例外として通達が認めているのは、礼拝をする場合だけです。しかもその場合も、
- バリの伝統的な正装(ブサナ・アダット・バリ)を身につけていること
- 月経中ではないこと
という条件がついています。腰にサロンを一枚巻いた観光客の姿は、この「正装で祈りに来た人」とは別のものとして扱われている、ということです。
有名な寺ほど、奥は見上げるものになる
実際の観光地では、この線引きがすでに形になっています。旅行ガイドの多くは、断崖のウルワツ寺院では観光客が歩けるのは外側の庭と崖沿いの道で、内側の聖域はヒンドゥー教徒の参拝者のためのものだと案内しています。海に浮かぶタナロット寺院も、岩の上の寺そのものには儀礼を行う信者しか上がれない、と紹介されることがほとんどです。
写真: Cindi CGJ / CC BY-SA 4.0
「せっかくサロンを巻いたのに、奥に入れなかった」と感じる人もいるでしょう。けれど、それは寺院の規則が厳しいのではなく、もともと観光客のための場所ではない区画があり、それを州が文書ではっきりさせた、ということです。バリの寺院は博物館ではなく、今も毎日祈りが捧げられている場所です。
門の手前で、見る場所を選ぶ
旅の組み立て方は、少し変わります。
- 寺院を訪ねる目的を「中に入る」から「外側の区画から眺める」に切り替えておく。タマン・アユン寺院のように、塀越しに多層の祠(メル)が並ぶ姿を見渡せる寺もある
- 割れ門や屋根付きの門の先に進んでよいかどうか迷ったら、自分で判断せず、寺院の係員やガイドに尋ねる
- 儀礼の日には、外側の区画でも祈る人の動線をふさがない
- 礼拝そのものに参加したい場合は、正装の用意も含めて、地元の案内人に段取りを相談する
サロンを巻いて門の前に立ったとき、その先は「入れる場所」ではなく「祈る人のための場所」だと知っていれば、門の手前から見える景色の意味も変わってきます。
ヘッダー写真: Philip Nalangan / CC BY 4.0(Wikimedia Commons)