台北のMRT、水を一口飲むだけで罰金も。旅行者がうっかりしがちな駅のルール

「一回しか飲んでないでしょう?」

2026年9月15日、台北MRT大安駅のホームで、飲み物を口にした男性が駅の保安員に注意を受けました。保安員が「続けて飲めば1,500元の罰金になりうる」と伝えると、同行の女性は「何度も飲んだわけじゃない」と食い下がり、電車に乗り込む間際に保安員へ中指を立てた——その一部始終が乗客に撮影され、台湾で大きく報じられています(聯合新聞網)。台北捷運公司(北捷)は、男性の飲食については証拠を集め終えており、法律に基づいて処理すると発表しました。

報道の焦点は中指のほうでした。けれど旅行者が覚えておきたいのは、その前の一言です。台北のMRTでは、「一口だけ」は言い訳になりません。

改札の手前の黄色い線から、水も「飲食」になる

台北MRTの駅では、改札機の手前の床に黄色い線が引かれています。台北市政府の案内によれば、この黄色い線の内側が「禁止飲食区」で、中に入った旅客は一律に飲食が禁止です。対象には、はっきりと白湯やミネラルウォーターを飲むことが含まれ、ガムや檳榔(ビンロウ)を噛むことも禁止行為として挙げられています(臺北市政府 常見問答「捷運系統內旅客禁止飲食規定與範圍為何?」)。

改札の手前に黄色い線が引かれた台北MRTの駅コンコース 写真: Solomon203 / CC BY-SA 4.0

根拠は台湾の法律です。大衆捷運法第50条第1項第9号は、禁止飲食区での飲食に**1,500元以上7,500元以下の罰鍰(過料)**を定めています(全國法規資料庫 大眾捷運法第50條)。駅のマナー掲示ではなく、法律の罰則です。

黄色い線の外側、つまり改札に入る前のコンコースでは、ごみを捨てない限り自由に飲食できます。禁止されているのは「駅」全体ではなく、線の内側。ホームも、エスカレーターも、車内も、すべてこちら側に入ります。

高鉄では飲めるのに、MRTでは飲めない

日本から来た旅行者がこのルールに引っかかりやすいのは、台湾の鉄道がすべてこうなっているわけではないからです。台湾高速鉄道(高鉄)や台湾鉄道の列車では、車内で弁当を広げる人の姿は珍しくありません。空港から高鉄で台北に着き、同じ感覚でMRTに乗り換えると、ルールだけが切り替わっています。

しかも台北の外でも、MRTは同じ法律の下にあります。台中市や桃園市も、この第50条に基づく裁罰基準を市として定めています(臺中市政府 裁罰基準/桃園市政府 裁罰基準)。「台北は厳しい」というより、「台湾のMRTは水もだめ」と覚えておくほうが正確です。

子どもの水筒も、例外ではない

2025年5月、北捷は改めて「年齢を問わず、黄色い線の内側では水を飲むことも禁止で、最高7,500元の罰鍰」と発表しました(中央社 CNA)。例外として明記されているのは、「公共場所母乳哺育条例」で保障された授乳だけです。

授乳以外の乳幼児の飲食については、済ませてから駅に入るか、駅の服務人員に相談するよう北捷は呼びかけています。子ども連れの旅行では、ぐずった子に水筒を渡すのも、改札の手前で済ませておく必要があるということです。

夏の台北は、駅まで少し歩くだけで汗がにじみます。喉が渇いたまま改札を通り、ホームで電車を待つ数分間に、ついペットボトルのふたを開けてしまう。黄色い線の内側では、その一口がもう対象です。

本当に必要なときは、飲む前に駅員へ

では、体調が悪くて水分や薬がどうしても必要なときはどうするか。

台北市政府の案内は、病気や体調不良など特別な事情で、水を飲む・飴をなめる・薬を飲む必要があるときは、服務人員に申し出れば対応してもらえるとしています。自己判断で飲むのではなく、先に声をかける。これが正規の手順です。

言葉に自信がなければ、改札脇の服務台で体調が悪いことを身ぶりで伝えるだけでも構いません。熱中症気味のまま我慢する必要はない、という点は覚えておいてください。

改札の前で、一口飲んでから通る

結局のところ、対策は一つの習慣に尽きます。

台北のMRTは清潔で、本数も多く、旅行者には頼もしい足です。その快適さは、乗客全員が黄色い線の内側で一口を我慢することで保たれています。ペットボトルを手にしたまま改札に近づいたら、線の手前で一度立ち止まる。それだけで、1,500元の説明を受けずに済みます。

ヘッダー写真: eugene_o / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)