シドニーでの食事で無駄なチップを払わない為に知っておくべきこと
日曜の朝、シドニーのカフェのテラス席。エッグベネディクトとフラットホワイトを平らげ、カウンターで会計を頼みます。店員がカード端末をこちらに向けると、画面には「Add a tip?」の文字と、10%・15%・20%のボタン。海外だし、チップは払うものだろう。少し迷ってから、いちばん控えめな10%をタップする——。
席に戻ってレシートを見ると、合計の少し上に、見慣れない一行があります。「Sunday surcharge 10%」。つまりこの朝食には、メニューの値段に加えて、すでに10%が上乗せされていた。そこへ自分で、さらに10%を足したことになります。
チップの前に、もう「日曜料金」を払っている
オーストラリアのカフェやレストランでは、日曜や祝日にだけ料金を上乗せする店が珍しくありません。ABCニュースは、日曜10%・祝日15%という例を挙げ、10〜15%が昔からの相場で、中には20%に達する店もあると伝えています(ABC News)。
理由は人件費です。同じ報道によれば、飲食店で働くカジュアル(非正規)スタッフの時給は、土曜で基本給の150%、日曜で175%、祝日には250%になります。日曜のカフェが高いのは、店員がその日「割増の時給」で働いているからで、上乗せ料金はそのコストを客に分けて負担してもらう仕組みです。
この上乗せは違法ではなく、上限もありません。そのかわり、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は店に表示のルールを課しています。メニューには「A surcharge of ○% applies on ○○」(○曜日に○%の追加料金がかかります)という文言を載せ、しかもメニュー上でいちばん目立つ価格と同じくらい目立つように書かなければなりません(ACCC Price displays)。注文する前に客が気づけるように、という考え方です。
つまり、この一行はたいていメニューに書いてあります。読み飛ばしているのは、こちらのほうなのです。
端末の「Add a tip?」は、店が選べる設定の一つ
では、あのチップ画面は何だったのか。
オーストラリアでは、チップは義務ではありません。払うかどうかは客の判断に任されていて、特に良いサービスを受けたときに感謝として少し上乗せする人がいる、という程度です。
一方で、カード端末のチップ画面は、店が端末の機能をオンにしたときにだけ表示されるものです。たとえば豪大手行ウェストパックの端末案内では、客は決まった金額を選ぶか、金額を入力するか、「No Tip」を選ぶことができ、チップ画面自体も店側が有効・無効を切り替えられると説明されています(Westpac EFTPOS Now terminal user guide)。
画面にボタンが並んでいるのは「払うのが決まりだから」ではなく、「店がその機能を使っているから」にすぎません。チップが客の判断に任されている以上、カウンターで注文して自分で受け取るカフェで「No Tip」を押すことに、気後れする理由はありません。
10月1日から、レシートの一行が一つ減る
オーストラリアの会計には、もう一つ、日本人が見落としがちな一行がありました。カードで払うと会計に上乗せされる「カード手数料(card surcharge)」です。
これは2026年に大きく変わります。オーストラリア準備銀行(RBA)は2026年3月、eftpos・Mastercard・Visaの3つのカードについて、2026年10月1日からカード払いの上乗せをなくすという結論を出しました(RBA Frequently Asked Questions – Removal of Card Payment Surcharges)。
ただし、RBAははっきり線を引いています。なくなるのは「カードで払うこと」に対する上乗せだけで、週末や祝日の上乗せ料金は対象外です。10月以降にシドニーを訪れる人のレシートからカード手数料の行は消えても、「Sunday surcharge」の行は残ります。
日曜のブランチは、メニューの端から読む
整理すると、シドニーの食事で「無駄」が生まれるのは、次の組み合わせのときです。
- 日曜・祝日で、すでに10〜15%前後が上乗せされている
- それに気づかず、「海外だから」と端末のチップ画面で10%以上を選ぶ
- 結果として、平日のメニュー価格より2割、3割高い金額を払っている
防ぐ方法は単純です。席に着いたら、料理の写真より先に、メニューの下の端に書かれた「surcharge」の文字を探す。会計で端末を向けられたら、合計額の内訳を確かめてから、チップの画面に指を伸ばす。本当に良いサービスを受けた夜のディナーなら、そのときに気持ちとして渡せば十分です。
同じ朝食でも、祝日でない平日に食べれば、この上乗せはかかりません。旅の日程に余裕があるなら、人気のカフェは平日の朝に回す、という選び方もできます。
ヘッダー写真: Kgbo / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)