ホーチミンの屋台で、うっかり25倍払わないためのお札の見分け方

20,000と500,000。紙に書いて並べれば、ゼロの数はひとつ違うだけです。けれど金額にすると、ちょうど25倍の差があります。

ベトナムの通貨ドンは桁が大きく、「ゼロの数さえ間違えなければ大丈夫」と考えて出かける人が多いはずです。ところがホーチミンの屋台で実際に起きやすいのは、ゼロの数え間違いではありません。財布から抜いた一枚の「色」を見て、確かめたつもりになってしまうことです。

青い札が、二種類ある

ベトナムで流通している紙幣のうち、10,000ドンから500,000ドンまでの6種類はポリマー(樹脂)製です(ベトナム国家銀行 流通している通貨)。紙の札よりつるりとして、少し透明な窓があり、手触りはどれもよく似ています。

そのなかで、旅行者のあいだで取り違えやすいと言われ続けているのが、20,000ドン札と500,000ドン札です。どちらも青みがかった色合いで、薄暗い屋台の明かりの下や、急いで会計をしているときには、ぱっと見で区別がつきにくい。両替や送金の情報サイトでも、「色で確認するのはいいが、色だけに頼らないこと。20,000と500,000はどちらも青系だ」と注意されています。

さらに厄介なのは、表の肖像がまったく同じだという点です。ベトナムの紙幣は、額面にかかわらず表面にホー・チ・ミンの肖像が描かれています。日本の千円札と一万円札のように「顔」で見分けることが、ベトナムではできません。

1杯のコーヒーに、25杯分の札を渡す

たとえば、屋台のバインミーやアイスコーヒーが20,000ドン前後だったとします。お釣りを出させるのは申し訳ないからと、ちょうどの青い札を1枚抜いて渡す。店の人が受け取り、次の客の注文に移る。ここで渡したのが500,000ドン札だったら、差額の480,000ドンは、誰かが気づかない限り戻ってきません。

屋台では現金払いが多く、会計はあっという間に終わります。お釣りのやりとりがない「ちょうど払い」ほど、確かめる瞬間がありません。旅行者の体験談には、ホテルに戻って財布の中身を数えたとき、大きな札が一枚足りないことに気づいた、という話がしばしば出てきます。相手に悪気がある場合もない場合もあるでしょう。いずれにしても、後から屋台を探して取り戻すのは、現実的ではありません。

見るべきは表ではなく、裏の「橋」

では、どこを見れば確実に見分けられるのか。いちばん覚えやすいのは、札を裏返すことです。

ベトナム国家銀行の資料によると、**20,000ドン札の裏には、中部の古都ホイアンの「来遠橋(チュアカウ)」**が描かれています。屋根のついた小さな木造の橋で、日本では「日本橋」とも呼ばれ、かつてこの港町にあった日本人町の商人たちが架けたと伝えられています。

写真: Vuong Tri Binh / CC BY-SA 4.0

一方、500,000ドン札の裏には、ホー・チ・ミンが幼少期を過ごした中部ゲアン省キムリエン村の生家が描かれています。瓦屋根の民家です。

つまり、屋根つきの橋が描かれているほうが、安いほう。ベトナムの屋台で、日本ゆかりの橋が小銭の目印になっている、というのは少し不思議な縁です。

もうひとつの手がかりは大きさです。ベトナムのポリマー札は額面が上がるほど横に長くなっていて、500,000ドン札は縦65mm・横152mmと、6種類の中でいちばん長い札です。重ねて端をそろえたとき、一枚だけはみ出していれば、それが500,000ドンです。

財布の中で、二つの札を会わせない

見分け方を覚えたら、次は「間違えようのない持ち方」にしておくことです。

同じ見分け方は、お釣りを受け取るときにも役に立ちます。たとえば500,000ドン札で100,000ドンの会計をしたら、戻ってくるのは400,000ドン。ほかの色の札に混じって青い札が入っていたら、裏返して、橋か民家かを確かめます。受け取った札をその場で額面ごとに並べ直しておけば、次の屋台で青い札を抜くときに迷いません。

ゼロの数を数えるのは、値札を読むときの話です。札を渡すときに見るのは、表の数字ではなく、裏の橋。ホーチミンの屋台で最初に覚えておきたいのは、両替レートよりも、この一枚の絵柄かもしれません。

ヘッダー写真: RG72 / CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)